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■ 2022年度 事業報告
 
[ 公1 ]教育研究事業
【 1.調査研究活動
. 日本教育史研究部門
 
「高度経済成長期教育史」研究部会

研究者
米田 俊彦(お茶の水女子大学教授)
大島 宏 (東海大学教授)
須田 将司(東洋大学教授)
鳥居 和代(金沢大学教授)
西山 伸 (京都大学教授)

 「1950年代教育史」研究部会から引き続き同じメンバーで米田研究員をリーダーとして、2021年3月末日に発足した。初回を含めて2022年度中には11回の研究会を開催し、各研究員からテーマを絞るための前提となる先行研究や基本資料を確認していく作業を進めた。具体的には次のとおりである。

@大島宏: 高度経済成長期における高等学校の「大衆化」を検討する際の課題や新規学卒者の採用をめぐる状況を確認したうえで、文部省の高校生徒急増対策や「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」(1961年)の制定過程に関する資料収集を行い、分析を開始した。
A須田将司: 第一に、「原子力の平和利用」が1950年代から60年代の政策・言論・社会運動にいかなる様相を呈したのかを把握すること。第二に、教育関係者の対応を教科書・副読本・教育言説に焦点を当てて捉えること。第三に、以上2点にわたる先行研究の収集と分析を進めた。
B鳥居和代: 高度経済成長期におけることばなおし運動をテーマに選定した。本年は鎌倉市立腰越小学校のネサヨ運動に焦点を当て、腰越小のことばの実践や腰越地域に関する資料をリストアップするとともに、当該時期の腰越の地域的変容や婦人会活動について調査・報告した。
C西山 伸: 高度経済成長期における高等教育についての概要を把握することに重点を置き、大学沿革史、文部官僚のオーラルヒストリー、1960年代後半の若者の運動についての著作を取り上げ、分析した。また、1960年代前半の大学管理問題についても、1950年代と比較しつつ分析した。
D米田俊彦: 高度経済成長期における教育に関わる基本的な先行研究(渡辺治、大門正克など)を2回にわたって検討したうえで、当時の教育に関する文部省、自民党、教員組合、各都道府県の動向を詳細に伝えている『時事通信 内外教育版』の記事の分析を開始した。
 
. 社会教育研究部門
 
「教育と公共」研究部会

研究者
上野 正道(上智大学教授)
浅井 幸子(東京大学教授)
狩野 浩二(十文字学園女子大学教授)
田嶋 一 (國學院大學名誉教授)
仲田 康一(法政大学准教授)
藤井 佳世(横浜国立大学教授)

 本研究部会は、社会教育の視点から「教育と公共」のテーマについて研究を進めている。2022年度は全11回の研究会を実施し、毎回2名ずつが研究の進捗状況を報告した。また、9月の定例会では、スウェーデンのグニラ・ダールベリ先生(ストックホルム大学名誉教授)をお招きして講演をしていただいた。各研究員の調査・研究テーマは以下の通りであった。
@浅井幸子: テーマは「コモン(共通)」の教育学。レッジョ・エミリアの幼児教育やレッジョ・インスパイアの幼児教育等に着想を得たマイケル・フィールディングとピーター・モスの「コモン・スクール」のアイデアから、アフリカ・テイラーのコモンワールディング・ペダゴジーへの展開をたどり、新しい公教育のロジックを見出そうとした。
A上野正道: 研究テーマは「教育の公共性と民主主義」。ジョン・デューイと進歩主義教育の思想史について教育の公共性と民主主義の角度から検討した上で、その理論を現代において発展的に更新しようとするガート・ビースタの教育哲学を考察した。デューイからビースタへの教育思想の接続を、世界の中で子どもが主体として生きようとする「世界中心の教育」として理解する視点を導き出した。
B狩野浩二: 研究テーマは「斎藤喜博の学校づくり」。特に島小における学校公開研究会要項を検討し、島小学校づくりの展開を整理し、その到達点である武田常夫と赤坂里子の授業案及び教材、授業記録を検討した。1962年度制作の映画「芽をふく子ども」を視聴、そこから島小教育実践の事実関係を検討した。
C田嶋 一: 日本社会の近代化過程で生じた教育の公共性をめぐる様々な思想とその実現形態についての研究を進めるために、京都の番組小学校の調査に続き郡中小学校の調査を行った。また戦後教育改革の時代に現れた公共性をめぐる理論と実践の歴史性について、大田堯の地域教育計画を手がかりに研究を進めた。
D仲田康一: 英国(イングランド)における公教育の論点を、サッチャー以降の教育政策の展開をもとに確認するとともに、主にマイケル・フィールディングによる「生徒参加」や「コモン・スクール」の理論を検討し、教育における公共性の再構築の方向性がいかに論じられているか、整理・把握した。
E藤井佳世: 藤井佳世:「語り」と「公共」をテーマに、まず、ドイツにおける政治・社会・経済・教育の複合的な観点から教育改革について考察し、1968年世代の教員による実践の語り直しを取りあげた。次に、ホネット承認論に基づく人間形成論に焦点を絞り、主体形成を語りと承認によって遂行される開かれたプロセスであることを確認し、さらに、ナラティヴ・アイデンティティの脆さ故の変容へ向かう可能性を通して人間形成論における公共圏の意義について検討した。
 
. 教育心理研究部門
 
「人生のやる気デザイン」研究部会

研究者
渡辺 弥生(法政大学教授)
榎本 淳子(東洋大学教授)
倉住 友恵(駒沢女子大学准教授)
杉本 希映(目白大学准教授)
中井 大介(愛知教育大学准教授)
中谷 素之(名古屋大学教授)

 本研究部会は、生まれてから死を迎えるまでの生涯発達をターゲットに、人生をよりよく生きるための駆動力として必要な「やる気」に焦点を当て、2022年度は11回の研究会を開き、これまでの発表をベースにさらに具体的、実践的に各自の研究テーマを掘り下げて、論文・紀要にまとめることを視野に活動した。
@榎本淳子: 本年度は先天性心疾患患者の発達的変化についてアイデンティティの確立に注目し、疾患が外から「見えにくい」か「見える」かによって生じるアイデンティティの確立の違いを検討するとともに、発達段階で生じる患者と周囲との葛藤とそれに対する「意味づけ」について、社会的適応との関連から検討した。
A倉住友恵: 時間的展望の中でも未来展望をテーマとし、未来展望がどのような要因 や介入によって形成されるのかを検討、また最新の未来展望研究のレビューを進めた。すでに開発されている未来展望に関する介入方法やキャリア教育との関連、また規定因として親の養育態度のあり方、COVID-19の流行による未来展望への影響について発表した。
B杉本希映: グリット(やり抜く力)をテーマに、好奇心、パッション、困難な目標への対処方略等との関係について先行研究文献をまとめた。それらの結果を踏まえて、どのようなGritのあり方が高いwell-beingと関連しているのかを明らかにすることを目的として、20代から50代を対象としたアンケート調査を実施し、分析結果を発表した。
C中井大介: 恋愛関係・夫婦関係における自己拡張欲求および自己包摂と関係の形成・維持の関連をテーマとした。今年度は海外の先行研究を中心にレビューを行い、恋愛関係・夫婦関係、またその他の分野における自己拡張理論に関する最新の研究について報告した。また、これらを踏まえ具体的研究計画についても検討し、発表した。
D中谷素之: テーマは多様化する学校環境における子どものやる気である。コロナ禍を経て対面での学びが拡大するなか、わが国では、外国ルーツ児や発達ニーズのある子どもなど教室の多様化が高まった。今年度は、多様化する教室において自分とは異なる他者を受け入れる力である多文化包摂コンピテンスの発達的検討と、学級適応の諸側面への影響を実証的に検討した。
E渡辺弥生: 社会情動的なスキルを中心に、well-beingなどを含めたやる気やポジティブなアウトカムとの関連性を検討した。社会情動スキルの理解や表現といった基礎的な科学的知見による研究のレビューや研究と同時に、実際の学校現場や人生における主観的な幸福感など実践的な方面についてレビューした。
 
. 幼児教育研究部門
 
「幼稚園におけるリスク・マネジメント」研究部会

研究者
秋田 喜代美 (学習院大学教授)
大澤 洋美 (東京成徳短期大学教授)
久留島 太郎(植草学園短期大学教授)
境 愛一郎 (共立女子大学准教授)
箕輪 潤子 (武蔵野大学教授)
宮田 まり子(白梅学園大学准教授)

 2020年4月より「幼稚園におけるリスク・マネジメント」を研究主題とし、特に園庭遊具の中でもリスクという点で注目されることの多いすべり台という遊具に焦点をあてて、園の保育者の専門性と実践知を検討した。22年度には、21年度に実施したすべり台に関する全国保育施設の園長へのグループインタビューの分析と、園長と保育者へのリスク意識とすべり台に関するKYT図版を用いた調査とリスク観との関係についての研究を学会発表・論文化した。またすべり台の写真を用いたリスクに関する保育者と養成校の学生に対する認識と判断の調査研究を実施。さらにリスクに関する各園のガイドラインの分析、すべり台の歴史の整理を行うとともに、すべり台製作メーカーへのインタビューの実施などの研究も進めた。そしてその結果を国内外の以下複数の学会・学会誌で発表するとともに、学会での自主シンポジウム、野間教育研究所第3回幼児教育研究部会セミナーを開催。さらにそのセミナーあわせて、これまでの研究知見の一部を、2種類のリーフレット(「保育とすべり台」「保育の中での遊びとリスク」)としてまとめ、公開した。
【学会発表および学会自主企画シンポジウム】
日本発達心理学会第33回大会学会発表(東京学芸大学、オンライン) 
ヨーロッパ乳幼児教育学会第30回大会ポスター発表 (グラスゴー)
日本乳幼児教育学会第32回大会自主シンポジウム(福山市立大学、オンライン)
国際幼児教育学会第43回大会発表(オンライン)
【論文】
乳幼児教育学研究第31号
植草学園大学研究紀要第23 巻
実験学校・野間自由幼稚園

 幼児教育研究部会の研究テーマである「園におけるリスク・マネジメント」の調査のため、アンケート調査、聞き取り調査に協力した。
 
【 2.講座・セミナー・育成活動
 
 幼児教育関連のセミナー・講演会を企画したが、コロナ感染防止のためすべて中止とした。
 
【 3.教育現場での相談・助言
 
 コロナ禍での保育の在り方、行事の仕方等、必要に応じて相談を受け、指示を出した。
 
【 4.広報活動
 
・情報発信のために、研究活動の内容をホームページ上で公開してきた。
・当研究所の活動を広く世間に知らしめるため、創立以来初の紹介リーフレットを作成し、関係各所に配布した
 
【 5.図書館運営
1. 蔵書
 
・2023年3月末の蔵書数は、書籍では和書26,137冊、学校沿革史類を合わせて、計35,029冊となった。雑誌は、継続購読誌13種、他に明治期〜昭和期に刊行された約300種以上の教育関係雑誌を保存している。
・本研究所の図書館は、日本教育史・社会教育・教育心理などを中心に、日本の教育に関する資料の収集を続けている。なかでも長年にわたり体系的に収集してきた日本の各学校の沿革史誌類は、2023年3月末現在8,892冊を所蔵しており、国内有数のものである。なお、2022年度は、研究所に沿革史誌の所蔵がない大学へ既刊沿革史誌調査を行って19冊の寄贈があり、沿革史誌類の収集は計95冊となった。
・蔵書については教育関係図書から順番に脱酸処理を進めており、2022年度は732冊の脱酸処理を行った。
 
2. 利用状況
 
・2022年度の利用者は、延べ109名。
・新型コロナウイルス感染症流行のため、開室時間を1時間短縮した。利用者に手指の消毒と検温への協力を依頼、閲覧席の間にアクリル板を設置し閲覧者が安心して利用できるよう努めた。
 
3. 所蔵資料データベース
 
・所蔵図書データベースと所蔵雑誌目録は全蔵書が検索できるよう随時更新。
・『野間教育研究所所蔵学校沿革史誌目録』「国公立高等教育機関編」のうち、「国立高等教育機関」の2022年度受入分までの確認作業が終了した。現在「公立高等教育機関」の作業を続けており、ホームページ上に公開できるよう進めている。
 
【 2022年度 事業報告 附属明細書】
 
 2022年度事業報告には、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」第34条第3項に規定する「事業報告の内容を補足する重要な事項」がないため、作成しない。

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