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■ 2021年度 事業報告
 
[ 公1 ]教育研究事業
【 1.調査研究活動
. 日本教育史研究部門
 
@「1950年代教育史」研究部会

研究者
米田 俊彦(お茶の水女子大学教授)
大島 宏 (東海大学教授)
須田 将司(東洋大学教授)
鳥居 和代(金沢大学教授)
西山 伸 (京都大学教授)

 米田研究員をリーダーとして2015年に発足した本研究部会は、2021年度は計6回の定例研究会を開催した。すでに紀要原稿執筆に入っていたことから、研究会ではその内容確認を行うとともに、10月より順次原稿を提出し校正を行った。2022年3月に紀要第64集として『1950年代教育史の研究』を刊行、目次は以下の通りである。

序 章 1950年代教育史の意義と課題(米田) 
 第1節  1950年代という時期の区分と性格
 第2節  1948年教育委員会法による市町村教育委員会の過渡的性格
 付論 政治団体としての日本教職員組合―日本民主教育政治連盟の誕生と政治活動
第1章 1950年代前半における大学管理問題―国立大学管理法案を中心に―(西山)
 第1節  国立大学管理法案の作成
 第2節  国立大学管理法案をめぐって
 第3節  国立大学管理の実態―神戸大学の事例―
第2章 1950年代における自治体立教育研究所と国立大学附設教育研究所(須田)
 第1節  文部省による設置勧奨と教育研究所の設立
 第2節  全国教育研究所連盟が推進した自治体立教育研究所の普及と展開
 第3節  国立大学附設教育研究所の事業とその展開
 第4節  静岡県における「三誌体制」の確立
 第5節  静岡大学における教育研究所の系譜
第3章 千葉県漁業地域における子どもの長期欠席問題
    ―銚子市・九十九里浜沿岸地域を中心に―(鳥居)
 第1節  戦後の子どもの長期欠席の顕在化とその周辺
 第2節  千葉県における子どもの長期欠席状況とその取り組み
 第3節  銚子市の漁業地域における長期欠席の子どもたちへの対応
 第4節  九十九里浜沿岸における長期欠席の子どもたちへの対応
第4章 1950年代における高等学校定時制分校―山梨県を対象として―(大島)
 第1節  高等学校発足期における定時制分校
 第2節  定時制課程増設期における定時制分校(1950年度〜54年度)
 第3節  定時制課程減少期における定時制分校(1955年度〜60年度)
第5章 勤評「神奈川方式」の成立と神奈川県教育委員会(米田)
 第1節  自民党と内山県知事の勤評「神奈川方式」に対する姿勢
 第2節  第一次勤評「神奈川方式」(1958年12月)の基本合意まで
 第3節  第一次勤評「神奈川方式」の合意破棄(1959年9月)まで
 第4節  勤評「神奈川方式」の成立

A野間教育研究所創立70周年記念事業である調査研究論文のうち、日本教育史研究部門「占領下沖縄群島における新制中学校の設立に関する研究」(執筆者・萩原真美氏)は、2022年5月末に特別紀要として刊行された。
 
. 社会教育研究部門
 
@「教育と公共」研究部会

研究者
上野 正道(上智大学教授)
浅井 幸子(東京大学教授)
狩野 浩二(十文字学園女子大学教授)
田嶋 一 (國學院大學名誉教授)
仲田 康一(大東文化大学准教授)
藤井 佳世(横浜国立大学教授)

 社会教育の視点から世界と日本の「教育と公共」を考察・研究する本研究部会は、6月に田嶋研究員から上野研究員にリーダーを交代して、2021年度は計11回の定例研究会を実施、ほぼ毎回2名ずつが研究経過を報告した。各研究員の調査・研究テーマは以下の通りである。
上野正道: 研究テーマは「教育の公共性と民主主義」。J.デューイ、G.ビースタ、B.クリックの教育と公共性の理論的、実践的な研究を進めた。デューイはコミュニティとのかかわりから、ビースタは主に主体化とシティズンシップ教育の観点から、クリックはアクティブ・シティズンシップの観点から教育と公共のテーマについて検討した。
浅井幸子: レッジョ・エミリア市とレッジョ・インスパイアの幼児教育に関わるMossの議論を手がかりに、“common”という観点から幼児教育を検討した。特にコモン・ワールド(ハンナ・アレント、ブリュノ・ラトゥール)、コモン・ワールディング(アフリカ・テイラー)という概念に着目、分断の中で共通の世界をどう構築するかという観点から教育のあり方を考察。
狩野浩二: 研究テーマは「斎藤喜博の学校づくり運動」。特にその起点である群馬県島小学校を中心とした調査・分析を行った。島小全8回の学校公開研究会の教材、研究授業者に関する分析、沖縄における学校づくり運動を担った横山芳春の著作について考察した。
田嶋 一: 自由民権運動の教育をめぐる公共論を検討。教育令によって制度化された学務委員制度について考察した。長野県の民権結社奨匡社に参加した教師たちによる月桂社機関紙『月桂新誌』から、学務委員制度と公選学務委員の実態を研究。次に大正デモクラシー期の民間教育運動団体・啓明会を取り上げ、この運動で展開された民間的公共論を検討した。
仲田康一: イングランドにおける教育政策の展開を跡付け、公教育制度改革の中で公共がいかにして実現し、あるいは縮減してきたのかを明らかにした。特に、新労働党政権下の教育政策と、その下で法制化され、その後保守連立政権下で拡大したアカデミー政策について、サッチャー・レガシーとの連続性・不連続性の観点から考察した。
藤井佳世: 研究テーマは「公共と人間形成」。批判理論と教育学の視点から、「学校と関係機関等の連携と公共圏― Mark Murphyの議論を手がかりに」、「コミュニティ、コモンズ、公共性の絡まった糸を解きほぐす―コモンズに着目して」、「教育における熟議と公共に関する研究― J.Bessant, Working with and thinking against Habermasを読む」について報告。
A社会教育研究部門における創立70周年記念調査研究論文「戦前期教養放送と農村青年の教育―ラジオ番組『農村への講座』の団体聴取運動―」(執筆者・邊見信氏)は、2022年5月末に特別紀要として刊行された。
 
. 教育心理研究部門
 
@「人生のやる気デザイン」研究部会

研究者
渡辺 弥生(法政大学教授)
榎本 淳子(東洋大学教授)
倉住 友恵(駒沢女子大学准教授)※出産・育児休暇のため休会
杉本 希映(目白大学准教授)
中井 大介(愛知教育大学准教授)
中谷 素之(名古屋大学教授)

 2020年5月に発足した本研究部会は、生まれてから死を迎えるまでの生涯発達をターゲットに、人生をよりよく生きるための駆動力として必要な「やる気」に焦点を当てる。本年度は、各研究員が具体的に研究テーマを定めた上で、関連文献の渉猟および調査研究に従事、計11回の研究会で成果を共有した。
渡辺弥生: Social and Emotional Learningという社会性や感情のコンピテンスを育成して、学びへの意欲を高める支援のあり方を探求した。児童生徒対象の実践に寄与するICTによる動画コンテンツの作成プロセスや、教師自身のSEL向上を目指すプログラムの構築と効果について成果を共有。
榎本淳子: 先天性疾患・障害を有する人の発達過程で生じる課題について、他の疾患や障害との比較によってアプローチした。複数の成人先天性心疾患患者を対象に継続的面接調査を実施、幼少期から現在の時間軸の中で生じる葛藤やその克服の実際を探りつつ、患者が共通して抱く葛藤と個別に抱く葛藤を示し、どうして差異が生じるのかを検討した。
杉本希映: テーマは「グリット(やり抜く力)」。国内外の研究を報告するとともに、グリットと近い概念としてSense of Coherence等についてのレビューを基に構成概念について検討した。さらに大学生のグリットに対する意識について自由記述の分析結果を発表。
中井大介: テーマは「人生のやる気としての『恋愛』に対する自己拡張理論の研究」。先行研究に基づき、青年期の大学生を対象に、恋愛関係による自己拡張欲求および自己包摂と恋愛関係の形成・維持との関連について報告。加えて具体的研究計画を発表。
中谷素之: 学校でのよりよい学びと育ちを実現するモチベーションについて、理論的・実証的研究を進めた。グローバル化の中で様々な個性・特性を有する子ども達が、居心地よく前向きに学びに取り組める教室環境を「教室で個性を許容する多文化包摂の能力」「発達的・文化的多様性を受容する教室環境の解明」の視点から調査案およびデータの検討を行った。
A教育心理研究部門における創立70周年記念事業調査研究論文「不登校の親に対する認知行動療法がファミリーレジリエンスに及ぼす効果 ―グループプログラムを通しての支援から」(執筆者・南谷則子氏)は、2022年5月末に特別紀要として刊行された。
 
. 幼児教育研究部門
 
@ 「幼稚園におけるリスク・マネジメント」研究部会

研究者
秋田 喜代美 (学習院大学教授)
大澤 洋美 (東京成徳短期大学教授)
久留島 太郎(植草学園短期大学准教授)
境 愛一郎 (共立女子大学講師)
箕輪 潤子 (武蔵野大学准教授)
宮田 まり子(白梅学園大学准教授)

 2020年4月にスタートした本研究部会は、秋田研究員をリーダーに、「幼稚園におけるリスク・マネジメント」を研究主題として定めた。21年度は、園庭遊具の中でもリスクという点で注目されることの多いすべり台に焦点をあて、すべり台に関する全国保育施設の園長へのグループインタビュー、園長と保育者へのリスク意識とすべり台に関する質問紙調査、同時に提出してもらったリスクに関する各園のガイドライン、すべり台の歴史などを分担して解析、結果を以下複数の学会で発表した。
  • 国際幼児教育学会第42回大会
  • 日本発達心理学会第33回大会
  • 日本乳幼児教育学会第31回大会
A幼児教育研究部門における創立70周年記念事業の調査研究論文「保育者の経験からの学びを支える省察の解明」(執筆者・上山瑠津子氏)は、2022年5月末に特別紀要として刊行された。
B実験学校・野間自由幼稚園

 幼児教育研究部会の研究テーマである「園におけるリスク・マネジメント」の調査のため、アンケート調査、聞き取り調査に協力した。
 
【 2.講座・セミナー・育成活動
 
 幼児教育関連のセミナー・講演会を企画したが、コロナ感染防止のためすべて中止とした。
 
【 3.教育現場での相談・助言
 
 コロナ禍での保育の在り方、行事の仕方等、必要に応じて相談を受け、指示を出した。
 
【 4.広報活動
 
・情報発信のために、研究活動の内容をホームページ上で公開してきた。
・足掛け5年にわたり募集・査読・編集してきた『公益財団法人 野間教育研究所 創立70周年記念 調査研究論文集』は2022年度5月末に上梓、教育研究機関等に配布予定である。
 
【 5.図書館運営
1. 蔵書
 
・2022年3月末の蔵書数は、書籍では、和書25,866冊、学校沿革史類を合わせて、計34,663冊となった。雑誌は、継続購読誌16種、他に明治期〜昭和期に刊行された約300種以上の教育関係雑誌を保存している。
・本研究所の図書館は、日本教育史・社会教育・教育心理などを中心に、日本の教育に関する資料の収集を続けている。なかでも長年にわたり体系的に収集してきた日本の各学校の沿革史誌類は、2022年3月末現在8,797冊を所蔵しており、国内有数のものである。なお、2021年度の沿革史誌類の収集は74冊だった。
・蔵書については教育関係図書から順番に脱酸処理を進めており、2021年度は608冊の脱酸処理を行った。
 
2. 利用状況
 
・2021年度の利用者は、延べ49名。
・新型コロナウイルス感染症流行による緊急事態宣言発令のため、2021年4月25日〜6月20日、2021年7月12日〜9月30日の期間、休室した。再開時には、手指の消毒と検温を実施し、閲覧者が安心して利用できるよう努めた。
 
3. 所蔵資料データベース
 
・作成を続けてきた研究所所蔵の雑誌・新聞一覧の確認作業を終え、ホームページ上に所蔵リスト(PDF)を公開。これで所蔵資料は図書・雑誌ともにすべてWeb上で検索可能となった。
・『野間教育研究所所蔵学校沿革史誌目録』「国公立高等教育機関編」のデータ公開に向けて現在も作業を続けている。
 
【 2021年度 事業報告 附属明細書】
 
 2021年度事業報告には、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則」第34条第3項に規定する「事業報告の内容を補足する重要な事項」がないため、作成しない。s

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